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プロジェクトリカバリのコツとヒント(3)

体制と役割の再定義 

 チームに役割と責任があるように、チームメンバー一人ひとりにも役割と責任があります。正しく取り組めばその役割と責任を果たすことができるように、プロジェクトマネージャやリーダは適切に権限を配分する必要があります。そのために、体制と役割を再定義しましょう。同じ結果になっても問題ありません。点検することが必要です。

 

 

「役割」を示した図はあるか

プロジェクト実行計画書などに、「体制図」は必ず準備されていると思いますが、「役割」を明記した資料まで準備しているでしょうか。リーダーとサブリーダーはどのように役割と責任が分担されているのか、各サブチームはそれぞれどのような役割を果たせばよいのか、サブチームのリーダーにはどんな責任があるのか。こうしたことが曖昧なまま進めてしまうと、「任せたつもり」「そこまでやるつもりはない」などと責任の押しつけとなり、せっかくの主体性が他責の精神に逆戻りしてしまいます。これは避けなければいけません。

 

「正しく取り組めばその役割と責任を果たすことができるように」と書きました。役割と責任を明確にして、メンバーにそれを果たしてもらうために、適切な権限を設定しましょう。言い換えれば、リーダーとしての期待を明確にすることでもあります。これを体制図や役割分担表などに整理してます。場合によっては、プロジェクトメンバーの相関図を書いて、(手描きでも良いと思います。必ず残しておき、共有してください)、誰が誰に対してどのような責任を持つのか、を示してもよいかもしれません。RACIチャートという手法もあります。

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正しい状態を診る

プロジェクトの中途段階で引き継いだ場合、特にトラブルプロジェクトの場合、作成・メンテナンスすべきドキュメントが放置されている場合があります。実態を正しく示している資料がないことも多いです。まず、以下の4点について、(1) 作成されているか、(2) 適切にメンテナンスされているか、(3) 実態と乖離していないか、を点検しましょう。

  • プロジェクト計画書
  • 体制図・役割定義
  • 課題管理表
  • 進捗報告資料

点検の結果、(1)〜(3) のポイントを満たせていない場合は、まず実態と合うように作成や改定をします。ドキュメントの作成やメンテナンスを漏らさないようにするために、テンプレート化することやメンテナンスルールを作ることを試してみてください。

 

実態と乖離していないか、特に「課題管理表のレベル」を評価するとプロジェクト状況がわかります。管理表の更新頻度が低かったり、担当者と期限が設定されていない、起票〜完了までのプロセスが定義されていない、などの状況であれば要注意です。

 

体制と役割を再定義したら、プロジェクトチームへ説明し、浸透させます。プロジェクトマネージャ・リーダは、メンバーへ役割やタスクを振ることを恐れてはいけません。マネージャ・リーダが権限委譲できないチームでは、マネージャ・リーダ自身がボトルネックとなりますので注意が必要です。

 

体制強化、増員の誘惑

なお、トラブルプロジェクトでは、「体制強化」策がとられることが多いと思います。しかし、無闇に人を増やさないほうが得策です。メンバーを増やすと、どんなに優秀な要員を追加したとしても、以下のロスが発生します。

  • コミュニケーション量が増え、プロジェクト内に余計なワークロードが増えてしまう
  • 仕事レベルのばらつきが増える。属人的な要素は少なからずあるので、増幅してしまう。
  • 追加したメンバーがパフォーマンスを発揮するまでに時間がかかる

 

類似した話題として、チームの成長曲線に「タックマン・モデル」という概念があります。どんなに経験豊富で優秀なメンバーを揃えても、この4つの段階は必ず通っていくというものです。体制強化・増員をするにあたって、理解しておくとよいでしょう。

 

 

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