もう3年も前のセミナーですが、最近復習してもなかなか興味深い内容だったので、まとめてみます。生産性について考えさせられ、クリティカルチェーンについて再学習するきっかけになったセミナーでした。
テレワークが続き、「組織」と「個」それぞれの生産性について考える機会が増えたのと、身近なプロジェクトマネジメントにおいて、「クリティカルパス」ではなく「クリティカルリソース」がボトルネックになるケースが目立つようになっていて、改めてこのセミナーを思い出したのでした。
- 1.PMI日本支部月例セミナー(2018年5月開催)
- 2.セミナーアジェンダ
- 3.オムロン社の事例 ーTOC理論/クリティカルチェーンー
- 4.ボーイング社の「7つの規律」
- 5.「マルチタスクは非効率」の実験
- 6.生産性・効率性を上げていく
1.PMI日本支部月例セミナー(2018年5月開催)
2.セミナーアジェンダ
1.オムロン社の事例
○最大成果を出すにはリソースをどう活用すればよいのか?
○部分最適から全体最適にするにはどうすればよいのか?
○努力が最終利益に転換されるにはどうすればよいのか?
2.ボーイング社の事例
○何を/何に変えるのか?
○どうやって変えるのか-WIPボードの活用-
○WIPボードを作るミニワークショップ
3.オムロン社の事例 ーTOC理論/クリティカルチェーンー
- やらないことを決める
- 万全の準備のない作業を投入しない
- 停滞したらすぐに助ける(すぐに手をあげる)
★マネジメントは110番ではなく119番になる - 質を上げ、後工程でボツになることを避ける
- できたゆとりでやりたいことをやる
TOC(Theory Of Constraints)理論やクリティカルチェーン法(CCPM)については解説されているサイトがたくさんあります。下記の本が物語とともに理解しやすいです。
セミナーで述べられていた、「マネジメントは110番ではなく119番になるべきだ」と言うメッセージがとても印象的です。監視・監督をするのがマネジメントなのではなく、リソースがボトルネックとなるなるような事態が生じたとき、マネジメントの真価が問われるということだと思います。
全体最適の捉え方、「成果の捉え方をシフトする」という点については以下のような解説がありました。
・「全体最適」というと、「みんながそれぞれ頑張る」と捉えがち
⇨組織が目指すことを達成するのが「全体最適」
4.ボーイング社の「7つの規律」
- 明確な優先順位
もっとも重要なタスクが最初に完了するように切り分ける - Bad Multi Task の排除
集中タイムを作る。Focus+Finish
電話着信、メールポップアップをOFF。
次の作業を始める前に今のタスクを完了させる。
「不安になってつい他のことに手をつけてしまう」をやめる。
- WIPを最小限にし、早期出荷
- Prepare / Start / Finish を停滞なく
準備の整っていないタスクがあれば準備に集中する。 - チェックリストは完全な準備とリスクの持ち越しを防止する
- 問題の見える化・検証・早期解決に集中する
- 上記1〜6を日常的に繰り返す
オムロンの事例はリソースに着目していましたが、ボーイング社の事例はタスクに着目したもの。WIP(Work In Progress)をいかに少なくするか、同時並行をいかに少なくするかが重要なポイント。
特に2点目の「2.Bad Multi Taskの排除」では、マルチタスクがなぜいけないかという点についての実験が印象に残っています。
5.「マルチタスクは非効率」の実験
次の図を見て、4つの配列を紙に書き出していくテストをしてみてください。
実際にやってみると如実にわかります。
(1)まずは、行方向へ「1、2、3、・・・、0」と書きだし、次に下の行を「a、b、c、・・・」と書いていき、4行目の「x」を書き終えるまでの時間を計測してください。
(2)次に、縦方向へ一列ずつ書いていきましょう。
「1、a、ア、i、2、b、イ、ⅱ、・・・」の順です。同じように最後の「x」を書き終えるまでの時間を計測してください。
いかがでしょうか。私のグループで実験をしたところでも、(2)のほうが絶対的に長い時間がかかりました。
頭の切り替え回数を考えてみましょう。(1)での切り替え回数は4回かと思います。一方(2)では39回の切り替えが必要だったのではないでしょうか。
このように、マルチタスクとは、並行にタスクをこなしているのではなく、限りなく細切れにしたシングルタスクを、限りなく高速に頭を切り替えて実行しているだけです。マルチタスクが効率化に必ずしも結びつかないことが、これでお分かりいただけるのではないでしょうか。
6.生産性・効率性を上げていく
セミナーのタイトルは働き方改革となっていましたが、チームでの作業、プロジェクトでの作業において、いかにして生産性・効率性を上げていくかを考える上で重要なヒントが得られた内容でした。
テレワークにおいては、メンバーそれぞれが生産を上げていけるように、マネジメントは制約リソースに注目したマネージメントを行うこと、マルチタスクを排除することを強く意識して取り組んでいく必要がありますね。